みどころ
コスチュームジュエリーに特化した日本初の大規模展覧会
コスチュームジュエリーの研究家・コレクターである小瀧千佐子氏が、長い年月をかけて収集したコスチュームジュエリーを展示します。その数は約450点に上り、世界的にも希少なコレクションです。近年日本ではファッションに関する展覧会が頻繁に開催されるようになりましたが、その多くはドレスが主役です。コスチュームジュエリーに焦点を当て包括的にご紹介する展覧会は今回が日本初であり、1点もの、あるいはごく少数しか制作されなかったコスチュームジュエリーが一堂に会する貴重な機会です。シャネルやディオール、イヴ・サンローランなどよく知られているフランスのオートクチュールのファッションデザイナーから、サルバドール・ダリやマン・レイなどシュルレアリストと親交を結んだエルザ・スキャパレッリ、日本で初めて紹介されるジュエリー・デザイナー、コッポラ・エ・トッポやリーン・ヴォートランなどによる、見ごたえのあるジュエリーが数多く展示されます。
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シャネル《ネックレス 「花」 モチーフ》
制作:メゾン・グリポワ、1938年、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、メタル、個人蔵 -
スキャパレッリ《ネックレス「葉」》
デザイン・制作:ジャン・クレモン、1937年頃、クリアエナメル彩メタル、メタルメッシュ、個人蔵
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クリスチャン・ディオール《ネックレス、イヤリング》
デザイン:ロジェ・ジャン=ピエール、制作:ミッチェル・メイヤー、1954年頃、ラインストーン、模造パール、メタル、小瀧千佐子蔵
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シャネル《クリップ》
制作:メゾン・グリポワ、1950年代、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、ラインストーン、メタル、小瀧千佐子蔵 -
シャネル《ブローチ》
制作:ロベール・ゴッサンス、1950年代、模造トルコ石ビーズ、ガラスペースト、メタル、小瀧千佐子蔵 -
スキャパレッリ《ブローチ「サーカスの馬」モチーフ》
1938年頃、陶器、メタル、模造パール、小瀧千佐子蔵 -
スキャパレッリ《ブローチ》
デザイン:サルバドール・ダリ、1951年頃、メタル、カボションガラス、ラインストーン、小瀧千佐子蔵 -
クリスチャン・ディオール《ブローチ「えんどう豆」モチーフ》
デザイン:シュザンヌ・グリポワ、制作:メゾン・グリポワ、1955年頃、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、模造パール、メタル、小瀧千佐子蔵 -
クリスチャン・ディオール《ブローチ》
制作:メゾン・グリポワ、1950年代、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、ラインストーン、メタル、小瀧千佐子蔵
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コッポラ・エ・トッポ《チョーカー 「花火」》
デザイン:リダ・コッポラ、制作:コッポラ・エ・トッポ、1968年、クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル、小瀧千佐子蔵 -
リーン・ヴォートラン《イヤリング「サーカスのメリーゴーランド」》
デザイン・制作:リーン・ヴォートラン、1945年頃、金色ブロンズ、個人蔵
パリのオートクチュールからヨーロッパ、アメリカまで コスチュームジュエリーの歴史的展開を辿る
コスチュームジュエリーの歴史は、20世紀初頭、パリのモード界から始まりました。女性をコルセットから解放したことで知られるポール・ポワレを先駆けに、シャネル、ディオール、スキャパレッリらが取り入れ、オートクチュールのドレスを引き立たせるジュエリーとして受け入れられました。
1920年代から1950年代にかけて開花したグランメゾンによるクチュールジュエリーは、パルリエと呼ばれる卓越した職人・製造業者の手によって生み出されました。
またリーン・ヴォートランの詩情あふれる世界観や、シス(シシィ・ゾルトフスカ)の類稀な色彩感覚など、それぞれに劣らぬアーティストたちの独自の様式美を見ることができます。
一方、シャネルやスキャパレッリがコスチュームジュエリー、バッグ、帽子などをアメリカのデパートに輸出していたことで、コスチュームジュエリーはアメリカにも徐々に浸透していきました。そして1935年から1950年にかけて、アメリカでも独自のコスチュームジュエリーが開発されていきます。ロードアイランド州プロビデンスには無数のメーカーがひしめき、機械化により大量生産が可能になったことで、低価格で安定した品質の製品が作られ、庶民にも手の届く存在となりました。中でもミリアム・ハスケルの作品は、ヨーロッパの香りを残して鮮やかな色彩感覚を持ちながら、コルクや陶器、木の実、貝、ガラス、樹脂など多様な素材を取り入れてハリウッドの女優たちに愛され、アメリカのファッション史に名を残しました。アメリカのコスチュームジュエリーは、長い宝飾文化の流れを汲むヨーロッパの優雅なコスチュームジュエリーとは対照的な、規範にとらわれない自由でユニークな表現で大きく羽ばたき、成長してゆくのです。
1920年代から1950年代にかけて開花したグランメゾンによるクチュールジュエリーは、パルリエと呼ばれる卓越した職人・製造業者の手によって生み出されました。
またリーン・ヴォートランの詩情あふれる世界観や、シス(シシィ・ゾルトフスカ)の類稀な色彩感覚など、それぞれに劣らぬアーティストたちの独自の様式美を見ることができます。
一方、シャネルやスキャパレッリがコスチュームジュエリー、バッグ、帽子などをアメリカのデパートに輸出していたことで、コスチュームジュエリーはアメリカにも徐々に浸透していきました。そして1935年から1950年にかけて、アメリカでも独自のコスチュームジュエリーが開発されていきます。ロードアイランド州プロビデンスには無数のメーカーがひしめき、機械化により大量生産が可能になったことで、低価格で安定した品質の製品が作られ、庶民にも手の届く存在となりました。中でもミリアム・ハスケルの作品は、ヨーロッパの香りを残して鮮やかな色彩感覚を持ちながら、コルクや陶器、木の実、貝、ガラス、樹脂など多様な素材を取り入れてハリウッドの女優たちに愛され、アメリカのファッション史に名を残しました。アメリカのコスチュームジュエリーは、長い宝飾文化の流れを汲むヨーロッパの優雅なコスチュームジュエリーとは対照的な、規範にとらわれない自由でユニークな表現で大きく羽ばたき、成長してゆくのです。
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ポール・ポワレ《夜会用マスク、ブレスレット 「深海」 》
制作:マドレーヌ・パニゾン、1919年、メタリックチュールにガラスビーズとクリスタルガラスで刺繍、小瀧千佐子蔵 -
スキャパレッリ《ネックレス「リボン」》
デザイン:ジャン・シュルンベルジェール、1937年、マットエナメル彩メタル、メタルチェーン、個人蔵
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シス(シシィ・ゾルトフスカ)《ネックレス》
デザイン:ダミアン・シュラー、制作:メゾン・シス、1960年頃、カボションガラス、クリスタルガラス、黒染加工メタルネット、小瀧千佐子蔵 -
ロジェ・ジャン=ピエール《ネックレス》
デザイン・制作:ロジェ・ジャン=ピエール、1960年頃、メタリッククリスタルガラス、模造トルコ石、メタル、小瀧千佐子蔵
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ミリアム・ハスケル《ネックレス、ブローチ「すみれ」モチーフ》
デザイン:フランク・ヘス、制作:ミリアム・ハスケル工房、1930年代、エナメル彩、ガラスビーズ、樹脂、ガラスペースト、シルクコード、メタル、小瀧千佐子蔵 -
ミリアム・ハスケル《ネックレス、クリップ「フラワー」モチーフ》
デザイン:フランク・ヘス、制作:ミリアム・ハスケル工房、1938年、ヴェネチアンビーズ、ガラスペースト、プラスチック、シルクコード、メタル、小瀧千佐子蔵
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メゾン・グリポワ《ブローチ》
制作:メゾン・グリポワ、1960年代、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、メタル、小瀧千佐子蔵 -
トリファリ《ペアクリップ「テノールフィッシュとマーメイド」》
デザイン:ジョセフ・ワィッツ、制作:トリファリ、クラスマン&フィシェル社、1940年、エナメル彩メタル、ラインストーン、ガラスペースト、小瀧千佐子蔵 -
トリファリ《ブローチ「枝に二羽の鳥」》
デザイン:アルフレッド・フィリップ、制作、トリファリ、クラスマン&フィシェル社、1942年、クリスタルガラス、エナメル彩メタル、ラインストーン、小瀧千佐子蔵
衣裳とコスチュームジュエリーのコーディネート
本展では、杉野学園衣裳博物館が所蔵するシャネル、ディオール、イヴ・サンローランによるスーツやドレス4点が参考出品されます。これらの衣裳に合わせて本展監修者の小瀧千佐子氏がコーディネートし、自らのコレクションから選出したコスチュームジュエリーをともに展示いたします。組み合わせによってファッション全体の雰囲気を一変させる、コスチュームジュエリーの醍醐味を味わうことのできる展示です。
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シャネル《スーツ》
デザイン:ATT.ガブリエル・シャネル、1960年代、ウール・ツイード、絹、杉野学園衣裳博物館蔵[参考出品] -
クリスチャン・ディオール《デイ・ドレス》
デザイン:クリスチャン・ディオールまたはイヴ・サンローラン、1957年頃、ウール、シャンタン、杉野学園衣裳博物館蔵[参考出品]